INTRODUCTION
イントロダクション官能と純文学が織り成す
喪失と再生の物語
繊細かつ都会的な作風で青春小説・恋愛小説の名作を発表し、『夏の葬列』など戦後ショート・ショートの名手としても高く評価される作家・山川方夫。彼の代表作にして遺作『愛のごとく』は愛と孤独の狭間で葛藤する人間の本性を、早熟にして類い稀なる感性で描いた詩情溢れる傑作。芥川賞候補に4度も選ばれ国内外から将来を嘱望されるも、若干34歳でこの世を去った天才作家の数奇な運命を象徴する原作の初の映像化となる。
愛に怯えながらも愛を求める主人公・ハヤオ役は『VIVANT』『恋をするなら二度目が上等』『東京タワー』などで人気に火がつき、国内外で注目を集める俳優・古屋呂敏。またハヤオの元恋人・イズミ役に監督・主演作『わたしの頭はいつもうるさい』で田辺・弁慶映画祭の俳優賞を受賞した宮森玲実をオーディションにて大抜擢。脇を固める俳優に山崎真実、吉岡睦雄、芳本美代子、東ちづるなど豪華な顔ぶれが揃った。
監督は、脚本家・小谷香織と共に谷崎潤一郎の名作『卍』『痴人の愛』を現代的に解釈し、多くの共感と驚嘆を得た井土紀州。井土×小谷の黄金タッグが再び実現し、戦後日本社会に執筆された原作を令和時代の「いま」に響く作品へと転生させた。
STORY
ストーリー青春の行き止まり。
女は忘れものを探し、男は捨てたはずの夢を拾う。
小説家としてデビューするが今はライターとして生きる男・ハヤオ(古屋呂敏)は、ある夜、SMに耽る夫婦の姿を垣間見る。夫に束縛される妻がこちらを見てほほ笑むその光景は、背徳と快楽、そして失われた情念の象徴として、ハヤオの心に深く刻まれる。
そんな中、大学時代の恩師の死をきっかけに元恋人・イズミ(宮森玲実)と8年ぶりに再会する。
現実と記憶、幻想が交錯する中、彼の心は静かに揺らぎ始め、イズミとの関係に再び引き寄せられていく。愛とは、幸福とは、人生とは。官能と純文学が織り成す、喪失と再生の物語。